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介護報酬改定2024のためにChatGPT(LLM・RAG)を活用しようと考えている話

介護報酬改定2024のためにChatGPT(LLM・RAG)を活用しようと考えている話

はじめに

この記事は株式会社エス・エム・エス Advent Calendar 2023の19日目の記事です。

qiita.com

本ブログでは普段あまり自身の業務の話はしませんが、現在の私は介護事業所が報酬請求に使う、いわゆる介護請求ソフトの開発を行っています。

開発と言っても、いろんな役割があり、私は15年ほど介護・福祉に関するシステム開発の経験から、ドメインエキスパート寄りのエンジニアの立ち位置で業務を行っています。

 

介護報酬改定について

介護保険制度における介護報酬の改定は、3年ごとに行われます。

介護現場はもちろんですが、介護請求ソフトも改定の対応に追われることになります。

改定の内容は例年、年明け前後から出てきて、施行される4月まで逐一情報が出てきます。その情報を入念に読み込み、システム改修が必要な部分を見極めて、短期間で対応をしていきます。

情報は様々なところから出ますが、主に厚生労働省WAMNET(とくに国保連インターフェース)から取得します。

また、改定の内容はそれまでの介護給付費分科会などの議論で検討されるため、どういった改定になりそうかを、前年の夏くらいから分科会の資料や議論(youtube配信あり。アーカイブなし。)を確認していきます。

 

介護保険制度は複雑化の一途を辿っている

前述の資料を見てもらえるとわかるとおり、資料は多岐に及び、また一番問題なのは、改定内容も変更点だけが記載されているだけで、全量を書いた文書は存在しません。つまり、全量を理解するためには今までの改定資料や基本となる資料、告示、通知、疑義照会、果ては地域ごとに存在するローカルルールに至るまで、多岐にわたる内容を把握する必要があります。

また、医療保険の方は、次回の改定は4月施行ではなく、6月施行になることが決定しています(中央社会保険医療協議会第550回)。これは、医療機関・薬局等やベンダの集中的な業務負荷を平準化するためとされています。

しかし、介護保険の方は、今(2023/12/10)現在、4月施行なのか6月施行なのかが確定していません。

 

短期間で多岐にわたる内容を調べて、判断する。。。これ、RAGでできないかしら?

 

RAG(Retrieval Augmented Generative)とは

RAGは、LLMとベクトルデータベースを活用したアプローチで、質問応答や自然言語処理の分野で革新的な技術となっています。

らしいです。

昨今よく話題となる、ChatGPTなど、生成AIってやつですね。

ええ、この内容もCopilot in Windowsで答えてもらいました。

Copilot in Windows

要は、外部から情報を与え、生成AIのLLMで答えを生成してくれる技術です。

RAGイメージ図

 

ChatGPTの新機能「GPTs」

前述のイメージ図を見てもらえばわかるとおり、これを実現するにはPDFからテキストを抽出し、適切な長さに分割、ベクトル化してDBに格納、質問内容とそれに近い情報をDBから検索しプロンプトをLLMに投げる。。。というようなプログラミングが必要でした。

しかし先日、OpenAIが11月6日にOpenAI Dev Dayで発表した新機能GPTsだとプログラミングすることなく、実現できそうです。

ただし、ChatGPT Plusユーザとなる必要があるため、月額20ドルが必要です。

また第三者に使ってもらうことも可能ですが、第三者もChatGPT Plusユーザである必要があります。今回は自分だけが使いたいという用途なので、問題なさそうです。

 

介護保険特化GPTsを作ってみた

GPTsを早速つくっていきましょう。

GPTsを作り始める

GPT Builderという画面(?)が立ち上がります。

Createタブ

介護保険制度に関するすべてを教えてくれるボットをつくる

 

英語で返答が来ました

初期は英語で返答されるみたい

翻訳すると、Care Navigatorという名前を提案されているようでした。

DeepLで翻訳

毎回翻訳するのも煩雑なので、ChatGPTのGPT Builderでやりとりを全て日本語化する簡単な方法の記事を参考に「以後、GPT BUilderの全ての応答を日本語でお願いします」と言ってみます。

日本語で返答を依頼

Care Navigatoで良いですと返すと、プロフィール画像を提案してくれました。

プロフィール画像の提案1

若い青年より高齢者のほうが直感的かなと思うので、変更を依頼してみます。

青年ではなく高齢者に変更してください

プロフィール画像の提案2

なんだか高齢の医者っぽいので、もっと介護している様子に変えたいです。

介護をしている様子に変えてほしい

プロフィール画像の提案3

やはりどうしても医者感が強いです。

訪問介護をしている様子に修正してください。

プロフィール画像の提案4

おお これなら介護感がありますね。これでいってみましょう。

プロフィール画像の確定

保存したのですが、画像が変更されません。

GPTsを保存する

さきほどの画像をダウンロードして、Configureタブで設定すれば変更できそうです。

Configureタブ

Configureタブを見ていると、Knowledgeという項目にUpload filesとありました。

今回は試しに前回の改定である2021(令和3)年の資料を投入してみました。

上記リンクからPDFをローカルにダウンロードして、ダウンロードしたPDFをアップロードしてみました。

KnowledgeにUpload

この内容で再度保存すれば良いはず。

なぜか保存のところの文字が中国語っぽくなっていますが、クリックしてみます。

GPTsを更新

さて、これでGPTsの作成は完了しました。

どんな返答がされるか試してみましょう。

 

居宅介護支援の逓減性について

前回改正の一つとして、居宅介護支援の逓減性の見直しがされました。

「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」より

「算定構造表」より

「別紙1-2指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」より

「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」より

「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」より

アップロードした前述の資料には上記のような内容が記載しているので、ここらから情報を取得して、答えを生成されることを期待します。

具体的には担当件数により報酬が変わることやICT活用について説明してもらえると成功だと思います。

 

居宅介護支援の逓減性について聞いてみた

居宅介護支援に逓減性について教えて

Q.居宅介護支援の逓減性について教えて

A.居宅介護支援における逓減性の見直しについては、令和3年度の介護報酬改定に関する審議報告に記載があります。この報告によると、居宅介護支援に関しては、質の高いケアマネジメントの推進や医療機関との情報連携の強化、退院・退所時のカンファレンスにおける福祉用具専門相談員等の参画促進などが挙げられています。また、逓減制の見直しに関する具体的な記述も含まれています​​。

ただし、この報告書からは、逓減制の具体的な内容や見直しの詳細についての情報は得られませんでした。逓減制の見直しについての詳細を知るためには、さらに詳しい資料や関連する政策文書の確認が必要です。

んー おかしいです。

取り扱い件数も、ICT活用のどちらも言及されず、具体的な内容を教えてくれません。

 

聞き方を変えてみました。

居宅介護支援の逓減性における、ICT活用について教えて

Q.居宅介護支援の逓減性における、ICT活用について教えて

A.居宅介護支援における逓減性とICTの活用に関しては、令和3年度の介護報酬改定において、事務の効率化を図るための措置が取られました。具体的には、ICTを活用することで、ケアマネジメントの実施を適切に保ちつつ、経営の安定化を図るために逓減制の適用件数が見直されました。この改定により、ICTを活用した場合、逓減制の適用件数が40件以上から45件以上に変更され、その結果、介護報酬の単位数が増加することになります​​。

この改定は、ICTを活用することにより、居宅介護支援事業所の事務処理の効率化を促進し、経営安定化に寄与するという目的があります。ICTの具体的な活用方法としては、例えば、ケアプランの作成、利用者情報の管理、サービス提供記録のデジタル化などが考えられます。これにより、介護支援専門員がより効率的に業務を行えるようになり、結果としてより多くの利用者への対応が可能となることが期待されています。

おぉ 取り扱い件数についても説明してくれました!

 

ICT活用の算定項目である「居宅介護支援費(Ⅱ)」について聞いてみます。

レスポンスの生成中にエラーが発生しました

なぜかエラーになりました。。。

再生成してみます。

Q.居宅介護支援費(Ⅱ)について教えて

A.居宅介護支援費(Ⅱ)に関する具体的な詳細情報を探しておりますが、現時点では該当する詳細情報を見つけることができていません。居宅介護支援費(Ⅱ)に関しては、介護報酬の算定方法、単位数、対象条件など、さまざまな要素が関係しています。これについては、さらに詳細な情報が必要となります。

もしご希望の情報がある場合、具体的な質問内容(例えば、報酬単位数、算定条件など)を教えていただければ、より的確な情報を提供できるかもしれません。また、地域や施設によって異なる場合があるため、詳細な情報は最寄りの介護支援専門員や市町村の担当窓口で直接確認されることをお勧めします。

今回結構返答に時間がかかりました(1分くらい?)。

それでこの返答はさすがに厳しいです。

 

取り扱い件数に関しては一定返答がきましたが、期待していた情報ではありませんでした。

もともとChatGPTが出た頃には、それっぽいことを話すだけで、嘘(ハルシネーション)かもしれないことから使えないと個人的に考えていました。しかし、知識データを渡したり、プロンプトの指示次第で、このハルシネーションを起こす確率は減らせるとのことで期待していたのですが、やはり使えないのでしょうか。

 

別のLLMを使ってみた

自分が指定した資料を指定できないですが、Copilot in Windowsにも聞いてみました。

Copilot in Windowsに聞いてみた

Q.居宅介護支援の逓減性について教えて

A.居宅介護支援の逓減制とは、ケアマネジャー1人あたりの担当件数が一定数を超えたとき、基本報酬を引き下げるという仕組みのことです。つまり、ケアマネジャーの担当人数に上限を設けて、ケアマネジメントの質の確保を図ろうとする制度です。逓減制は、2021年4月の介護報酬改定で緩和されました。それまでは、40件目から逓減制が適用されるとの規定でしたが、45件目からに変更されました。つまり、40~45件未満の担当件数でも、基本報酬をそのままもらえるようになりました。ただし、この緩和を適用するには、ICTの活用や事務職員の配置などの条件を満たす必要があります。この緩和は、全国的なケアマネジャー不足や居宅介護支援事業所の経営環境の改善を目的としていますが、実際には適用している事業所は1割にも満たないという調査結果があります12。ICT機器の導入に関する費用負担や操作の難しさ、人手不足による余裕のなさなどが、適用が進まない理由として挙げられています

おお。担当件数やICT活用も言及してくれてます!

 

googleのBardにも聞いてみました。

Bardに聞いてみた

Q.居宅介護支援の逓減性について教えて

A.居宅介護支援の逓減性とは、ケアマネジャー1人あたりの担当件数が多くなると、介護報酬が段階的に減らされる仕組みです。

厚生労働省は、ケアマネジャーの負担軽減や、質の高いケアマネジメントの提供を目的として、2006年度の介護報酬改定で逓減制を導入しました。

逓減制の適用基準は、2021年度改定で、それまで「40件以上」とされていたものが「45件以上」に変更されました。また、事務職員の配置や、ケアプランデータ連携システムの活用など、一定の要件を満たした場合は、適用基準が「50件以上」に引き上げられます。

逓減率は、担当件数に応じて以下のとおりです。

担当件数    逓減率
45件以上    10%
50件以上    20%
55件以上    30%
60件以上    40%
逓減制の適用により、ケアマネジャーの担当件数を抑制し、一人当たりの負担を減らすことが期待されています。また、ケアマネジャーの質の向上にもつながることが期待されています。

ただし、逓減制の適用により、ケアマネジャーの収入が減る可能性があるため、事業者やケアマネジャーからは、適用基準の引き下げや、逓減率の緩和を求める声も上がっています。

厚生労働省は、逓減制の運用状況を検証し、必要に応じて見直しを検討していく方針です。

ICTには言及がないですが、担当件数には言及がありました。

 

実際使えるの?

先程のテストだとCopilot in Windowsが期待していた返答に一番近かったです。こちらには知識データの指定をしていないので、ネットから情報を取得しているはずです。これで期待する返答が来るということは、GPTsの知識データの渡し方が悪いのではないかと考えています。

 

どうも調べる限り、モデルの設定や知識データの指定、質問の仕方(プロンプトエンジニアリング)により、返答はかなり変わるようで、このあたりに試行錯誤だったり、ノウハウが必要のようです。

 

今回は試しに前回改正を例にしたので、ある程度ネットに情報量があったと思いますが、実際にはまだネットに情報が少ない状況で知りたいので、やはり知識データを指定する方式(RAG)とするしかないのではないかと思います。

 

ChatGPTが出た頃には使えないだろうと思っていたのですが、使いようによっては活用できそうだし、おそらく使い勝手や精度は向上していきそうなので、これからもキャッチアップして活用の仕方を模索していくべきというのが現時点の私の考えです。

 

ただし、介護保険制度のような自分がある程度詳しい内容に関するものだけで、全く知らない分野は、嘘なのかの判断が出来ないのでそこは盲目的に信じるのは危険だなと。

ただ、これはググって、サイトに書いている内容をすべて信じないのと一緒のことなので、それはそうだなと。

 

まとめ

将来的には、介護保険制度に関する知る限りのすべての情報を生成AIに渡して、質問したらなんでも答えてくれるようなチャットボットがほしいです。

おそらく、そう遠い未来ではなく、自分専用の特化した生成AIを活用する時代に突入するんだろうなと考えています。それらを活用しながら、今後もより良い介護請求ソフトの開発を行っていきます。

 

ちなみに本記事のタイトルの画像は、Copilot in Windowsで「介護保険と請求ソフトをイメージするイラストを描いて」と指示して描いてもらいましたw