はじめに
この記事は株式会社エス・エム・エス Advent Calendar 2024、シリーズ2の17日目の記事です。
去年の記事に引き続き、今年もいつもとは若干毛色の違った介護保険制度や報酬算定についての記事になります。
今年から新設された高齢者虐待防止措置未実施減算
去年の記事にも記載しましたが、今年(2024年)は介護報酬改定の年でした。
(ちなみに、まさか4月と6月の2回に分かれるとは全く想定できませんでした。。。)
改定内容のひとつに、高齢者虐待防止措置未実施減算の新設がありました。
令和6年度介護報酬改定における改定事項についてにも記載しているとおり、この減算はほぼ全サービスに新設されました。
算定構造とサービスコード表
介護請求ソフトの開発者など、介護保険の請求事務方は基本報酬や加減算が新設された場合、計算・請求に必要な算定構造とサービスコードを確認します。
試しに訪問介護と訪問リハビリを見てみましょう。
訪問介護
訪問リハビリ
サービス種類により注加減算だったり単独加減算だったりする
先の資料には所定単位の100分の1に相当する単位数を減算とあったので、訪問介護、訪問リハビリともに算定構造には「-1/100」と表記されています。
サービスコードだと、訪問介護だと例えば「11A001:身体介護01・虐防」で161単位。訪問リハビリだと例えば「14C201:訪問リハ高齢者虐待防止未実施減算1」で-3単位と表記されています。
これは訪問介護の高齢者虐待防止未実施加算が注加減算として新設されているのに対し、訪問リハビリの同加算が単独加減算で新設されているためです。
所定単位は先の例だと、訪問介護では「114845:身体介護01」の163単位となります。
そのため減算は163 × -1/100 = -1.63 ≒ -2単位となります。
元の「114845:身体介護01」の163単位+減算-2単位で、「11A001:身体介護01・虐防」161単位としてサービスコード化されています。
訪問リハビリでは「142111:訪問リハビリ1」の308単位となります。
そのため減算は308 × -1/100 = -3.08 ≒ -3単位となります。
こちらは「14C201:訪問リハ高齢者虐待防止未実施減算1」-3単位としてサービスコード化されています。
注加減算と単独加減算
先の訪問介護のように、基本報酬と加減算を合わせて1サービスコード化される加減算を注加減算(基本報酬+注加減算=合成サービスコード)といい、対して先の訪問リハビリのように、加減算だけで1サービスコード化されるものを単独加減算といいます。
注加減算と単独加減算の違いは算定構造では表現されておらず、サービスコード表まで見ないと判断できません。
先の計算例にように注加減算で合成サービスとなっているのであれば計算済みの単位数が定義されているので、請求ソフト内で計算する必要はないですが、単独加減算の場合では計算しないといけないなど、注加減算か単独加減算かにより考慮しないといけないことは多々発生します。
今回のようにほぼ全サービス種類で新設された加減算が、サービス種類によりどちらかであるかを確認するには膨大なサービスコード表を確認しないといけないことになります。
膨大な資料を確認する。。。これNotebookLMで出来ないかしら?
NotebookLMとは
今年も色々生成AIサービスはできてきて、NotebookLMというものがあるということはなんとなく知っていたのですが、あまりよく知らないのでChatGPTに聞いてみました。
ユーザーがアップロードしたドキュメントを基に、要約や質問応答を行うことができます。
ということは、サービスコード表(算定構造も?)をアップロードして、「訪問介護の高齢者虐待防止未実施加算は注加減算か単独加減算かどちら?」と聞けばわかるのでは?
実際やってみた
さっそくNotebookLMでノートブックを作成します。
ソースとなる資料はサービスコード表のURLを指定します。
サービスコード表を取り込むと、概要や質問の候補が表示されました。
聞いてみた。
訪問介護の高齢者虐待防止未実施減算は、注記減算に該当します。
資料には、単位数算定記号の説明として以下の記載があります。● +○○単位 ⇒ 所定単位数 + ○○単位● -○○単位 ⇒ 所定単位数 - ○○単位● ×○○% ⇒ 所定単位数 × ○○/100● * ○%加算 ⇒ 所定単位数 + 所定単位数 × ○○/100● * ○%減算 ⇒ 所定単位数 - 所定単位数 × ○○/100
上記の説明によると、「○%加算」「○%減算」は所定単位数に対する計算であり、資料ではアスタリスク(*)で示されています。
一方、資料の各サービスにおける「高齢者虐待防止措置未実施減算」の記載を確認すると、アスタリスク(*)は使用されていません。
このことから、訪問介護の高齢者虐待防止未実施減算は「○%減算」のような所定単位数に対する計算ではなく、「-○○単位」のような所定単位数からの減算、つまり注記減算に該当すると考えられます。
うぉぉぉぉ。。。。ん?注記減算?
説明もなんか変。
まぁ、さきほど記載したとおり、訪問介護は合成サービスとなっているので、「-○○単位」という表記にはなっていないというのは合ってるけど、それまでの説明がおかしいです。
次に訪問リハビリも聞いてみた。
訪問リハビリの高齢者虐待防止未実施加算について
訪問リハビリにおける高齢者虐待防止未実施加算も、訪問介護と同様に注記減算に該当すると考えられます。
根拠は以下の通りです。
●資料 の「単位数算定記号の説明」には、以下のように記載されています。
○+○○単位 ⇒ 所定単位数 + ○○単位
○-○○単位 ⇒ 所定単位数 - ○○単位
○×○○% ⇒ 所定単位数 × ○○/100
○* ○%加算 ⇒ 所定単位数 + 所定単位数 × ○○/100
○* ○%減算 ⇒ 所定単位数 - 所定単位数 × ○○/100
●この説明によると、「○%加算」「○%減算」は所定単位数に対する計算であり、資料ではアスタリスク(*)で示されています。
●資料 では、訪問リハビリのサービスコード表において、夜間早朝の場合や深夜の場合の加算、2人でのサービス提供の場合など、様々な加算・減算が記載されています。これらの加算・減算の記号を確認すると、「+○○単位」「-○○単位」「×○○%」が用いられており、「* ○%加算」「* ○%減算」は使用されていません。
●資料 の訪問リハビリのサービスコード表において、「身体9・虐防」など、高齢者虐待防止未実施加算の記載を確認すると、アスタリスク(*)は使用されていません。
これらのことから、訪問リハビリの高齢者虐待防止未実施加算も、訪問介護と同様に「○%減算」のような所定単位数に対する計算ではなく、「-○○単位」のような所定単位数からの減算、つまり注記減算に該当すると考えられます。
ああ。。。やっぱりだ 間違っています。
算定構造もソースに追加して、再度聞いてみましたが、結果は変わりませんでした。
そもそも注加減算と単独加減算を理解しているのか
そもそもサービスコード表や算定構造には注加減算や単独加減算の説明や定義はされていません。そのため、そもそも注加減算と単独加減算を理解していないのではと思い、聞いてみました。
うん、理解していないです。
そもそも普通にGoogleで注加減算で検索しても、明確に説明しているサイトもほぼ見当たらないので、そりゃそうかと。
介護領域は明確な定義や説明が不足しているものが多いので、どうしようもないのかも。
でも、試しにChatGPTやMIcrosoftCopilotにも聞いてみます。
実際はいろいろ説明してくれましたが、まとめの1項目として上記があり、おぉ これは合ってる!
うーん なんだかおかしいです。
まとめ
生成AIは日々進歩しているようですが、そもそも資料化や定義が明確にされていない介護領域だとなかなか活用が難しいのかもしれません。
改正の資料なども基本的に変更となった分だけの差分資料で、すべてを網羅している資料というものが存在しません。
ここが介護領域の一番の難解なところだと個人的に考えており、各請求ソフト会社は個別で資料を作成しノウハウを蓄積しているのが現状のはずです。
基本となる計算や制度のついては厚労省がとりまとめるなどに期待したいところですが、今までの現実をみているとなかなか難しそうです。
生成AIが判断できないんだから、もっと資料や定義を明示してほしい!といった、なんだか逆転現象のような現実がきて改善されないかなぁと思いつつ、また来年に期待します!
ちなみに本記事のタイトルの画像は、ChatGPTで「介護保険の報酬請求に必要な算定構造やサービスコードをイメージしたイラストを書いて」と指示して描いてもらいましたw